201811/14

家族で行く海外旅行。一年の始まりをインドの聖地で親子で迎えるガンジス川の初日の出

ガンジス川の日の出

ガンジス川の日の出

ひとりで行く旅もいいですが、家族と行く旅行というものもまた別の良さがあります。ひとりの場合は、自分と旅先が1対1で向き合い自分を見つめ直すことができますが、家族と一緒の場合は、日頃見られない家族の表情や対応を新鮮に感じるときがあります。その年、私は高校生になった息子を連れ、インドのガンジス川で初日の出を見ることを思いつきました。

冬の北インドは乾季なので、川の水量は少ない

冬の北インドは乾季なので、川の水量は少ない

シヴァ神を祀るヒンドゥーの聖地へ

ヒマラヤ山脈の南麓を水源とする大河ガンジスは、インド北東部の平原を流れ、やがて他の川と合流してベンガル湾に注ぎ込みます。この川の中流域にあるのが、ヒンドゥー教の聖地ヴァーラーナシーです。川沿いのガート(沐浴場)で身を清め、シヴァ神を祀るヴィシュワナート寺院(黄金寺院)を参拝するため、多くの巡礼者が訪れる町です。町があるのはガンジス川の西側で、対岸となる川の東側は“不浄の地”として、人が住まない土地になっています。

川沿いの大きなガートでは、毎夕「プージャ」と呼ばれる宗教儀式が行われる

川沿いの大きなガートでは、毎夕「プージャ」と呼ばれる宗教儀式が行われる

息子を連れインドで新年を迎えに

子供が小学生ぐらいまでは数年に一度、家族で海外旅行をしていました。しかし子供が大きくなってくると、それもだんだんと難しくなってきますよね。まして男の子なら、親と行くのを次第に嫌がるようになるでしょう。そんなこともあり、今回が最後かもしれないと、私が仕事でよく行くインドに誘ってみたのです。年末年始の休みを利用し、息子とバックパッカースタイルでインド旅行というのも面白いのではないかと。

今回妻は留守番なので、宿泊はいつもの安宿でOKです(笑)。高校生の息子が冬休みに入り、私たちは日本を出てインドに向かいました。インドでは、クリスマスと新年はまったく盛り上がりません。いちおう祝日ですが、町の見た目はほぼ通常営業です。インドの国民の8割がヒンドゥー教徒なので、インドのお正月というとヒンドゥー教の新年である「ディワーリー」になります。これはヒンドゥー暦に従い、毎年10月下旬から11月下旬に行われ、インドではその前後1週間ほどが休みになります。一方、1月1日は休日になりますが、とくに家庭でイベントがあるわけではありません。

狭い路地では、ウシとすれ違うのも大変

狭い路地では、ウシとすれ違うのも大変

聖地ヴァーラーナシーに到着

息子にとっては初めてのインドなので、いちおう観光地も回りました。アグラのタージマハルやジャイプルのマハラジャの宮殿などですね。その後、ヴァーラーナシーへ向かいました。

ヴァーラーナシーは大変なにぎわいでしたが、年末だからではなく、いつもそうなのです。川沿いのガート付近の道は人がすれ違えるほど狭く、曲がりくねっているので視界が開けません。なので慣れないと方向感覚を見失い、道に迷ってしまいます。また、ヴァーラーナシーは野良牛が多い町です。ヒンドゥー教でウシは神様シヴァの乗り物である聖なる動物。このヴァーラーナシーはシヴァ神の聖地ということもあり、とにかくウシが多いのです。なので道幅が狭いところでは、ぶつからないように気をつけなくてはなりません。息子はかなりウシに怯えていました(笑)。ふつうは問題ありませんが、気が立って攻撃的になっているウシや、路地を激走していくウシもいるので、要注意です。

 

大晦日の夜と花火

大晦日の夜、ガンジス川を見下ろす屋上レストランに行きました。インドとはいえ冬なのでそこそこ冷え込み、気温は10〜11月の東京ぐらいでしょうか。日本人が多く、お客の1/3ほどを占めていました。きっと年末年始の休みを利用してきているのでしょう。食事中に日本が先に新年を迎えたので、私は息子に新年の挨拶をするよう、母親にLINE電話させました。

その夜は新年に切り替わる少し前に、宿泊している宿の屋上に登りました。屋上から見る町は、まっ暗で静かでしたが、新年になると同時に町のあちこちで小さな花火が上がりました。それも、めいめいが勝手にダラダラと打ち上げる感じです。まあ、それもインドらしいのですが。20分ほどするとそれも収まり、私たちは翌朝に備えて部屋に戻り眠りにつきました。

夜明けのガート

夜明けのガート

ガンジスの川面を覆う霧

翌朝、5時に頼んでいたボート漕ぎの青年はとうとうホテルに現れませんでした。後で聞いたところによると、前夜に友だちと飲みすぎて寝坊したとのこと。その言い訳ですんでしまうのも、インドといえばインド。

仕方なく私たちはボートからの初日の出をあきらめ、まだ薄暗い路地を抜けてガートへと向かいました。すでに大勢の人々が川岸に集まっていましたが、霧が立ち込めて川面すら見えません。それでも沐浴する人、ボートに乗る観光客など、毎朝見られるいつもの光景がそこにはありました。いつもより日本人旅行者の姿が多く目に付くのは、日本人にとって初日の出が特別だからなのでしょうか。ボートの客引きが声をかけてきましたが、すぐには霧が晴れないようなので、私は息子とガート沿いの茶屋でチャイを頼み、イスに腰掛けて目の前のガンジス川をぼーっと見つめていました。

朝の沐浴風景。ふつうに体を洗っている人もいる

朝の沐浴風景。ふつうに体を洗っている人もいる

静かな日の出で一年が始まる

参拝の前の沐浴と言っても、お祈りしている人ばかりではなく、風呂代わりに石鹸で体や髪の毛を洗う人もいます。息子はこの沐浴風景を見るのは初めてなので、インパクトがあったことでしょう。

明るくなるに連れ次第に霧は晴れていき、登る瞬間は見えませんでしたが、小さな太陽が見えてきました。視界を淡いオレンジ色で包み、川面のボートをシルエットにするその姿は、モネの絵画「印象・日の出」を連想させました。私たちは親子揃って、聖なる川の初日の出に見入りました。自分が世界の一部になったような気分です。こうして私たちの新しい一年が始まりました。

 

このインドの旅が息子にどんな影響を及ぼしたのか、向こうからはあまり語らないので、正直私にはわかりません。彼にとっても親に素直について行くギリギリの年齢だったかもしれません。何かを感じてくれ、いつか彼の人生に役立てばいいかなと思っています。子供は気がつくと成長しているもの。私にとっては、その年齢の子供と過ごせる機会は一度限りのものです。 “一生モノ”の旅にならない訳がありません。

前原 利行

日々、自分の興味があるものを追いかけています。音楽、映画、アート、歴史、そしてまだ見ぬ世界の風景や文化…。心に刻まれた一生モノの経験が、自分の最大の財産でしょうか。これからも、まだ知らない出会いを探していきたいと思っています。

前原 利行
この記事を書いた人

この記事を書いた人前原 利行

FEATUREDおすすめ記事