201902/19

伝説のアトランティス 火山爆発により形作られたサントリーニ島へ

サントリーニ島の旧港。崖上にあるのはフィラの町

今まで世界を旅し、いろいろな海を見てきました。その中でも独特の色を持っているのが地中海です。熱帯の海にはない、少し黒みを含む深い青さ。映画『グラン・ブルー』で憧れた、あの青さです。ギリシャのエーゲ海にあるサントリーニ島は、その海の青と建物の白のコントラストがまるで芸術品のような景観を作り出しています。その美しさから観光で知られる島ですが、ここはアトランティス伝説の舞台とも言われています。今回はそんな伝説の島への旅を送ります。

断崖がある絶景。エーゲ海に浮かぶサントリーニ島

ギリシャ本土とトルコのアナトリア半島の間に広がるエーゲ海。その海域に散らばるキクラデス諸島南部に位置するのが、サントリーニ島です。断崖の上にある白い町からの眺望がすばらしいことから、ギリシャの中でも特に人気の高い島です。日本での知名度も高く、CMのロケ地に使われたこともあります。しかし私が行こうと思ったのは、絶景もさることながらアトランティス伝説との関係を知っていたからでした。

島の東側にあるカマリビーチ。砂浜の黒砂は火山岩が砕けたもの

夏の観光シーズンが始まる前の5月、私はミコノス島の滞在を楽しんだ後、フェリーでサントリーニ島へ向かいました。島が近づいてくると、目の前に急な断崖が迫ってきます。島の中心となる町フィラは崖の上にあり、船着場からの高低差は250m。昔はきつい階段を歩いて登るか、ロバに荷物を載せて運ぶしかなかったようですが、今ではバスやタクシー、ケーブルカーでも行けます。心配しましたが、まだ観光シーズン前なのでホテルが満室ということはありませんでした。私はひとまず荷物を部屋に置き、外へと飛び出しました。

大きな島の中央部分が噴火により陥没し、海になってしまったことがわかる

プラトンが書き記したアトランティス伝説とは?

サントリーニ島は細長い三日月型をした島で、その三日月の内側の部分が断崖になっています。この断崖は火山の噴火により島の中央が陥没してできたもの。つまり現在のサントリーニ島は大きなカルデラの外縁部なのです。

古代ギリシャの哲学者プラトンがその著作の中で記したアトランティスの話をしましょう。プラトンの時代(前4世紀前後)よりさかのぼること9000年前、大西洋にアトランティスという大きな島(大陸)があり、海神ポセイドンの血を引く人々の国が栄えていました。しかしやがてアトランティスの人々は傲慢になり、領土の拡大を目指します。アテナイ(アテネ)はギリシャ諸国と連合してかろうじて勝利しますが、その直後、アトランティスは神々の罰を受け、地震と津波で一昼夜にして海中に水没してしまいます‥。

アトランティスという島が本当にあったかどうかは、歴史学ではプラトンの創作だろうと考えられていました(プラトン以外に出典がないため)。しかしサントリーニ島で起きた火山の大爆発がわかると、これがアトランティス伝説のもとになったのではないかという学説が生まれたのです。

サントリーニ島の古代ティラの遺跡。これはミノア文明よりずっと後の、古代ギリシャ〜ローマ時代の町の遺跡

サントリーニ島に残るミノア文明の遺跡

サントリーニ島の火山噴火が起きたのは、紀元前1610年ごろ。これは世界でも千年に一回という大噴火で、エーゲ海一帯に大変な災禍をもたらしたようです。当時、エーゲ海ではクレタ島のミノア文明が栄えていました。サントリーニ島にもミノア文明時代のアクロティリ遺跡があります。これはフィラの町から10kmほど離れた場所にある町の遺跡ですが、すっかり火山灰に覆われていました。ここからは「ボクシングをする少年」「百合とツバメ」といった、ミノア文明を代表する壁画が発掘されています。この遺跡から遺体や貴金属が見つからなかったことから、噴火は突然ではなく住民は避難していたようです。それから半世紀後、ミノア文明は突然滅びますが、この大噴火との因果関係はわかっていません。

イアの町からの眺め。空と海と教会のドームの青が調和している

崖上の町から見る夕暮れのエーゲ海

崖上にあるフィラの町を歩くと、眼下にすばらしいエーゲ海が見渡せました。通りにはホテル、カフェ、レストランがびっしりと並んでいます。一ヶ月後のバカンスシーズンを控え、壁のペンキを塗り直したり、店の改装をしたりしている姿も見られました。

フィラの町から島の北端の小さな町イアへは、バスで約30分。バスを降り白壁の家々が続く細い道を行くと、サントリーニ島の写真によく使われている青ドーム屋根の教会が見えてきました。確かに目の前にこの教会があると、眺望にはいいアクセントになりますね。

夕日に染まるフィラの町

昼間は深い青をたたえた海も、日が傾いてくるとその色を失っていきます。夕日に染まる島と海。その絶景を見ていると、かつてここであった大噴火やアトランティス伝説も、どこか現実離れしたできごとのように思えてきました。そしてふと、自分がずいぶん遠くへ来てしまったという思いがよぎりました。

 

ギリシャ有数の観光の島サントリーニ島。夏になればクルーズ船が次から次へと停泊し、ビーチは観光客であふれ、ホテルは満室となる人気の観光地です。そんな場所なので、紀元前に島の形が変わるほどの大災害があったとはなかなか想像がつきません。しかしざっくりと削られた断崖を見ていると、確かに大自然の破壊力の大きさを感じます。そんな自然と伝説をめぐる旅もまた、“一生モノの旅”なのです。

 

前原 利行

日々、自分の興味があるものを追いかけています。音楽、映画、アート、歴史、そしてまだ見ぬ世界の風景や文化…。心に刻まれた一生モノの経験が、自分の最大の財産でしょうか。これからも、まだ知らない出会いを探していきたいと思っています。

前原 利行
この記事を書いた人

この記事を書いた人前原 利行

FEATUREDおすすめ記事