201903/21

家々が山肌を覆いつくす圧巻の光景 チベット仏教の聖地「ラルンガル僧院」

山肌にビシーッとへばりついたマッチ箱のような小さな赤い家。数えきれないほどある家々が山肌を覆いつくしています。標高3880メートルの高原の中に突如現れるこの不思議な山には、「ラルン・ガル・ゴンパ」というチベット仏教の寺院があります。中国語では「喇栄五明佛学院」と呼ばれ、チベット世界が好きな旅行者なら一度は行ってみたい憧れの地です。私も2004年の四川留学中に初めて行きました。当時、喇栄五明佛学院がある四川省甘孜チベット族自治州色達までの道は悪く、寒い季節だったので行くのが本当に大変でした。「一生モノ」の旅だったはずなのですが、どうしてももう一度見たくなり、その9年後、再び色達に向けて旅立ったのです

開放と非開放を繰り返す喇栄五明佛学院

喇栄五明佛学院は、2001年には8000人以上の僧と尼僧がいたと言われる巨大寺院です。社会不安から漢民族の信者も増え続けています。宗教の取り締まりが厳しい中国なので、喇栄五明佛学院に目をつけていないはずがなく、開放と非開放を繰り返しています。2004年は、外国人旅行者が入れるかどうか微妙な時期でしたが、2回目の2013年は、いわばブームの年でした。この時、四川省成都のユースホステルに泊っている旅行者の多くが、この喇栄五明佛学院を目指していました。

2004年の喇栄五明佛学院。2013年と比べると建設中に見える

喇栄五明佛学院の歴史は意外と浅く、1980年代前半に建設された

2013年の喇栄五明佛学院ブームの年、再び色達へ

喇栄五明佛学院に行く人が一気に増えていたのは、ネットであの不思議な風景を見た人が多かったことや、中国当局が観光地化して宗教的意味合いを薄めようとしていたことが理由に考えられます。また、色達での道路事情もものすごく良くなっていました。2000年代前半は成都から1泊2日かかりましたが、2013年になると、約13時間で行けるようになりました。ただ、いきなり色達に行くのは、高地が続きすぎて、高山病にかかってしまう可能性大。私は、成都とセルタの間にあるマルカムで1泊し、高所順応してから行くことにしました。2013年12月、セルタを目指して成都を出発!

喇栄五明佛学院に向かう道の入り口で見られる仏画

マルカムを朝7時20分に出発したバスは、午後2時30分、喇栄五明佛学院に近い三叉路に着きました。バスの終点は、約20キロ先の色達県の中心部。ここまで行けば、ユースホステルやホテルがありますが、時間を節約したい私は、三叉路にある安宿に泊まることにしました。

10年ぶりの喇栄五明佛学院は変わっていたか?

喇栄五明佛学院は、セルタ県城に続く道路沿いから2、3キロ奥まったところにあります。途中まで乗合バンに乗り、駐車場で降りた後は、れんが色の袈裟を着たお坊さんたちと一緒に荒涼とした山間部の道を歩きます。赤い家で覆われたあの不思議な山が見えてきました。まさに「おおっ、やっとたどり着いた!」と言う感じ。あっと言う間に喇栄五明佛学院に到着。午後の読経の時間が始まっているのか、本堂の入口にはお坊さんが脱いだブーツの山。中に入りにくいので見学は後にして、まずは山に登ります。喇栄五明佛学院の裏が山になっており、適当な道を見つけたら家と家の間を登って行きます。

この細い道を登っていく。薄い板張りの家は本当に寒そうだ

マッチ箱のような赤い家は僧坊です。近くで見ると、各家はまさに掘っ建て小屋。窓から仏画が描かれたベッドや棚、飼っている猫が見えました。僧坊の前の細い道を縫うように登って行くと、標高が高いので青空に近づいていく感じです。てっぺんに到着! チベット族の巡礼者たちが金色屋根のお堂の周囲をぐるぐる回り、お堂の前では小さな子供まで五体投地をしています。赤い山のてっぺんからすり鉢状に広がる谷を見降ろすと、そこは赤い僧坊に覆われた赤い谷でした。こんな不思議な風景は中国のどこに行っても見られません。しかも10年前より格段にパワーアップ。まさに「一生モノ」の風景を見られたことに感動です!

家族総出で巡礼に来ているチベット人も多い

てっぺんから見た喇栄五明佛学院

 

私が行った翌月の2014年1月、喇栄五明佛学院で火災が起きました。その後、2016年7月から中国当局による大規模な破壊が始まったと言われ、外国人も中国人も行けなくなってしまいました。2013年の2度目の旅が、本当に「一生モノ」の旅になってしまったのです。しかしいつかまた、ここが開放される日が来るかもしれません。その時、私はまた行ってしまうのか、今はまだ想像もつきません。

 

[DATA]

喇栄五明佛学院への行き方
四川省成都の茶店子バスターミナルからセルタ行きのバスに乗り、終点下車。セルタ県中心部より喇栄佛学院行きの乗合バスあり。

 

浜井 幸子

古い街、面白い形の塔、粉もの料理など、何かワクワクするものを求めて旅をしています。最近は、中国大陸を夜行列車で移動することも少なくなりましたが、早朝、目的地の駅に着いた時の感じが好きです。まぶしい光の中、駅から一歩踏み出す時のあの緊張と期待が入り混じった気持ちを大切にしたいと思っています。

浜井 幸子
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