201903/07

珍しいグルメ発見! 生ハムで有名な雲南省諾鄧(ヌオドン)

魚や肉などの生食の習慣がない中国に、生ハム作りを見に行ってきました。「生ハム」は中国では「火腿(フオトゥイ)」と言います。火腿は中国では単にハムと言う意味ですが、実際は生ハムのことです。その中国で生ハムと言えば浙江省の金華ハムが有名ですが、産地は中国各地にあります。私が行ったのは、雲南省北部の町・大理から約165キロ離れた雲龍県の諾鄧(ヌオドン)です。毎年冬至になるとこの村中で生ハム作りをすると言うドキュメンタリー番組を見たので、冬至にばっちり照準をあわせて行きました。中国の生ハムの本場で、その生ハム作りを見られるなんて本当に貴重な機会です。人生初で最後と思い、行ってきました。

生ハム作りの季節にやってきたのに、まさかの展開

諾鄧は、秦、漢代から塩を産出している村です。塩は国家の専売品だったので明代には、塩を管理する「塩課提挙司」と呼ばれる役所も諾鄧に置かれていました。抜けるような冬の青空の下、石畳が敷かれた村のあちこちで「火腿、売ります」の手描き看板を目にします。これから人生初、豚の後脚に諾鄧産の塩を塗りつけて、生ハム作りをするところを見学できると思うと、ワクワクしてきました。ところが村人に聞くと、火腿作りはちょうど1週間ほど前に終わったそうなのです。冬至に照準を合わせてこんなに遠くまでやって来たのに、もう言葉もでません。

豆腐腸を作る村の広場。後ろは塩を管理する塩課提挙司があった場所

ショックでぼんやりと村を歩いていると、広場に村人が集まって、なにやら作業中。のぞきこむと白いぐにゃぐにゃしたものを作っています。それは「豆腐腸(トーフチャン)」と言う豆腐で作ったソーセージでした。豆腐に豚の血、五香粉を加えてものを混ぜたものを、豚の腸に詰めたものです。これを日陰の涼しいところに干し、豆腐が黒くなったら食べられるとか。生ハム作りは残念でしたが、豆腐腸作りが見られるのも滅多にないことです。とにかく見学させてもらうことにしました。

竹の棒に豆腐腸をしばりつけ、民家に運びこむ

中国でも珍しい豆腐腸とは?

豆腐腸は大理市永寧県の特産品ですが、火腿と比べれば無名です。地味な食材というのが原因のひとつかもしれません。しかし私にとっては特別な食材です。今回、生ハム作りを見に来るきっかけになったのは、中央電視台で放送された「舌尖上的中国(舌の上の中国)」と言う食のドキュメンタリー番組でした。実は前年、私はこの「舌尖上的中国」で取り上げられた安徽省の黄山へ、特産の「毛豆腐」を食べに行っています。その時、菌が表面にびっしりはえた毛豆腐に感動した私は、珍しい豆腐巡りを旅のテーマのひとつに決めていました。だからまさか諾鄧で豆腐を使った食材を見られるなんて、予想外のうれしい展開です! 翌日、豆腐腸が村の食堂で食べられるそうなので、村を出る前に生ハムを買っておくことにしました。

「火腿(生ハム)売ります」の看板。地鶏ハムや生ハム入りチャーハンも食べられる

諾鄧に行ったからには、やはり買ってみたい特産の火腿

諾鄧は781戸、人口約2200人の小さな村です。村のあちこちで「火腿売ります」の看板がかかっているので、そこで買うことができます。私が行った家では、塩を豚の足全体にまぶし、天上から吊るす前の状態のものを見せてもらうことができました。これだけでも感激です。生ハムは作ってから半年後ごろから食べられますが、やはり1~2年保存したものが美味しいと言われています。特に2年以上ものは熟成して本当に美味しそうですよ。

豚の足に塩をまぶした後、暗い場所に1か月おき、それから風通しが良い場所に吊るす

私が買った頃、生ハムは500グラム60元(約1080円)。「舌尖上的中国」で紹介され、値段が倍になったと言われている

火腿は、薄く切って炒めるより大きな塊を水で茹で、スープをとるのが一番上手な使い方だそうです。諾鄧ではこんな風に火を通して火腿を食べますが、上海や北京などの沿岸部の大都市では、薄く切って生のままワインと一緒に楽しむ人も増えています。

豆腐腸と干し豚を蒸したもの。豆腐腸は五香粉と干し豚の塩がきいているので蒸しただけのものを食べても美味しい

豆腐腸は豆腐? それともソーセージ?

さて翌日、村の広場に面した民宿兼食堂で、私は念願の豆腐腸を食べることができました。1か月以上干して外側が真っ黒になった豆腐腸。切ると、中は表面に比べて赤黒いグロテスクな感じです。これを20分以上茹で、臭みをとります。それを屋外で干した豚バラ肉のスライスと一緒に蒸せば、できあがり。お味は豆腐なのにしっかりした噛み応えがあり、肉そのもののよう。食感も味も豆腐ではなく、まさにソーセージでした。

 

生ハム作りを見に行き、私が旅のテーマのひとつにしている珍しい豆腐作りを見ることができました。この予想外の展開が私に教えてくれました。広大な中国大陸には、まだまだ外国人旅行者に知られていない珍しい食材があるのでしょう。日本にはない、面白い食材を求める旅は。これはまさに“一生モノ”の体験ができる、美味しい旅になることまちがいないでしょうね。

 

[DATA]

アクセス
雲南省昆明から高速鉄道で大理駅へ。大理駅から徒歩で大理新バスターミナルへ移動し、7:30~16:40まで約40分おきに出ている、雲龍行きのバスで所要3時間。雲龍から三輪タクシーで約20元(約360円)。

 

浜井 幸子

古い街、面白い形の塔、粉もの料理など、何かワクワクするものを求めて旅をしています。最近は、中国大陸を夜行列車で移動することも少なくなりましたが、早朝、目的地の駅に着いた時の感じが好きです。まぶしい光の中、駅から一歩踏み出す時のあの緊張と期待が入り混じった気持ちを大切にしたいと思っています。

浜井 幸子
この記事を書いた人

この記事を書いた人浜井 幸子

201902/21

一度行ったら、一生通いたくなる街・台北 「街歩きの楽しい都市」ナンバーワンの理由

人々の温かな日常に触れられる、台北の街角

台湾は日本人に人気の行き先。すでにリピーターとなり、お気に入りの店やエリアがいくつもある…そんな方がたくさんいることでしょう。だからこそ「行ったことがない」という人に会うと、「なんで?」とその良さを力説したくなる私ですが…じつは台湾に行き始めたのはここ10年ほど。一度行ったらたちまち夢中になりました。特に台北は、街歩きが魅力的な都市としては世界有数ではないでしょうか。まだまだ経験不足ではありますが、台湾ファンの一人として、「台北が街歩きに最強」なその理由をまとめてみたいと思います。

とりあえず、にぎやかでないと!

まず店が多い。そして地元の人が多い。これは楽しい街歩きに不可欠の要素です。歩いても歩いても、こんなに店が立ち並ぶ町があるでしょうか。初めて台北を訪れたとき、ガイドブックの地図上で何も描かれていない場所に行っても、そこにお店がズラリと並んでいるのを見て驚きました。商店街を見かけたら歩かないと気がすまない私は、あっちへ行かなければ、こっちも…と大忙しです。

提灯が飾られた、風情ある路地

そんな庶民的な商店街を中心に飲食店の数もハンパなく、食の楽しみがいっぱい。おいしいものには事欠きませんし、ドリンクスタンドの充実にも目を見張ります。代表的な台湾グルメ以外にも、自分でおかずをチョイスできるお弁当屋さんも気になるし、日本でいう洋食屋さんやステーキ店なども「台湾ではどうだろうか」といちいち入ってみたくなります。私はパンが好きなので、ベーカリーも必ずチェック。日本にありそうでない、工夫を凝らしたおいしい菓子パンは素通りできません。

歩きながら、美しいディスプレイに見惚れることも

散策が止まらない、エンドレスな町

暗くなればあちこちで夜市が開かれていて、毎晩お祭りのようです。また西門界隈は22~23時ごろまで、飲食店はもちろんファッションのお店も開いていてにぎやか。朝から夜までくまなく街歩きができる都市は、そうそうありません。際限なく店はあるわ、いつまでも開いているわ、まさにエンドレス。歩き疲れてヘトヘトなのに、街歩きが止まらず、宿に帰るのはいつも遅くなってしまいます。

しかもすごいのは、治安がいいことです。海外ではスリや詐欺師など、街角には観光客を狙った専門の犯罪者がいそうなものですが、そういう人が日本並みにいません。おつりのごまかしもなし。だからユルユルで旅ができます。ほかの国だと安全面を考えて、または店が閉まるという理由で、夜はホテルにいることが多いのですが、ここでは出ずっぱりとなります。歩いていて私が注意すべきと思ったのは、曲がる車が歩行者優先ではなく、車優先でグイグイ来ることが多い、そのくらいです。

色とりどりの看板に、たくさんのバイクが台北らしい

快適に歩けて、気軽に休める

気分を変えてモールやデパートに行けば、近代的な空間でショッピングができ、一流品を見ることもできます。さらに台北には巨大な地下街があり、地下だけでも本気で見れば1日がかり。地下なので、雨の日だって快適です。雨といえば、商店街の歩道に沿って屋根がついていることが多いのも、台湾の特徴。外にいたって傘なしで歩けてしまうから助かります。

そして素晴らしいのはお店の前などにベンチが置いてあり、無料で座れる椅子が多いこと。いちいちカフェに入らずとも気軽にひと休みできるのは、街歩きでかなりの高ポイントですね。コンビニでも休憩スペースがあるのが当たり前。またカフェに入ると、持ち込みのパンやお菓子などを食べている人がたまにいます。それでも何もとがめられない、おおらかなところも魅力です。

台北で大きく移動したいときは、地下鉄が便利。路線はわかりやすく、料金も安いです。また、台北地下鉄のトイレは頻繁に掃除されていてきれいです。駅にトイレがあると思うと、安心して1日出歩いていられます。さらに私はまだまだ乗りこなせていませんが、バス路線もかなり発達しているので細かく移動できます。

屋根つき歩道あり、地下街ありで、雨の日でも街歩きが快適!

安心感と異国情緒の共存

それから台湾は日本人にとって、ある程度文字が理解できるのがいいですね。漢字なので地名は覚えやすいし、看板を見て意味がわかることも多いですから。漢字はあちらが発祥なのに、「これをこう書くのか」と、思わず感心したり、ツボに入ってクスッとしたりすることも。飲食店ではメニューを見て内容を想像できたり、お店の人と筆談で意思疎通できたり。街歩きもますます充実しますね。

人に目を向けてみれば、現地の方たちは日本人観光客に慣れており、とても親切。異国へ行って、ここまで気楽に過ごせることはなかなかないでしょう。海外にいるとは思えないような安心感がありながら、街は日本とは違います。漢字だらけのカラフルな看板がびっしり並び、趣のある古い街並みも多く残っていて独特。目ではなじみのある文字も、聞くとまったくわからない中国語…。異国情緒あふれ、旅ごころが盛り上がります。こうした「安心感と異国情緒の共存」こそ、台北の大きな魅力ではないでしょうか。

看板の意味がわかるとニンマリ、うれしくなります

「私には台北がある」という支え

また、街といえばファッション。台北は欧米と違って、日本レベルの微妙なおしゃれが通じる、世界でも稀有な場所ではないかと思います。日本のファッション雑誌が普通に浸透しているので、世界的なモードとは別の、東京の流行(カジュアルからフェミニン、コンサバまで)がそのまま理解され評価されます。日本で「これが今おしゃれ」という服を、海外で着ると誰もわかってくれない、むしろ浮いている…そんな経験をした方なら、この違いがわかると思います。

おしゃれが楽しいそんな台北は1年中温暖で、真冬に訪れてもそんなに寒くありません。気候の良さは楽しい街歩きの大切な条件ですよね。近いから休みが短期間でも行きやすくて、もちろん時差ボケなし。たくさんの航空会社の路線があり、航空券も驚くほどお手ごろです。こんなにいいことずくめの行き先がほかにあるでしょうか。

 

街歩きの魅力が、これでもかというくらいそろった台北。いつでも気軽に行けて、何度行っても飽きず、ホッとでき、新しい発見がある。だから人気の町なのでしょう。私にとっては、手軽で確実なこころの避難所。「あそこに行けば大丈夫」という、お守りのような“一生モノの旅先”なのです。

 

Chiri

人知れず旅に出て、ひっそり帰ってくるソロトラベラー。地元の人でにぎわう街をウロウロするのが何より好き。世界のどこかからひそかに持ち帰った一生モノの感動、驚き、学び、気づき…そんなあれこれを、ここに打ち明けさせてください。

Chiri
この記事を書いた人

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