201812/04

死ぬ前に一度は観たい。来日しないロックミュージシャンのライブを見に、海外へ行く旅 [海外旅行 フェス]

日本に来ないなら海外へ観に行ってしまうのもいい(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

日本に来ないなら海外へ観に行ってしまうのもいい(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

中学の時にKISSの来日コンサートに行って以来、ライブに行くのが大好きになりました。学生時代は、多い時には有名無名、国内海外を問わずに毎週のようにロックのライブを観ていた時期もあります。しかし大人になり家庭も持ち、歳も取ると、その回数はどんどん減っていきました。人生も落ち着き、いい年齢になってきたこの頃ですが、今度はかつて見たかったアーティストたちが次々と他界するニュースを聞くようになりました。そこで数年前から、「行けるうちに見ておく」と海外へコンサートを見に行くようにしています。これは自分にとってある意味、時間との戦いの“一生モノの旅”なのです。

早めに行けば、前の方でアーティストを見られるチャンスもある(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

早めに行けば、前の方でアーティストを見られるチャンスもある(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

「いつか観たい」ではなく、積極的に実現させる

きっかけは2016年1月10日にデビッド・ボウイが亡くなったことでした。その前年の11月、私はベテランロックバンドであるフリートウッド・マックのオセアニアツアーのニュースを知りました。バンド最盛期のメンバーによる再結成ツアーですが、メンバーも高齢だからこれが最後のチャンスかもしれません。長年のファンなのに一度もライブを観たことがない私は、こちらから海外へ行くのもいいかと思いました。しかし結局は踏ん切りがつかずに諦めてしまったのです。そして年が明け、好きだったボウイが亡くなり大きなショックを受けたのです。ボウイは過去の来日時に2回ライブを観たことがあり、行っておいて良かったと思うと同時に、フリートウッド・マックのライブに行かなかったことを強く後悔したのです。

同じ1月にはイーグルスのグレン・フライと、アース・ウインド&ファイヤーのモーリス・ホワイトが相次いで亡くなりました。共に好きなバンドで来日もしていたのですが、見そびれていたのです。自分が好きなアーティストは60〜70年代デビューが多く、メンバーも高齢なのでそろそろ亡くなってもおかしくありません。ならば「行けるうちに行っておこう!」と、未見の海外アーティストたちの公演スケジュールをチェックするようになりました。「死ぬまでに観る」ことを目標にしたのです。自分だっていつ死ぬかわかりません。また、生きていても病気になって動けなくなることだってあります。ならば後悔するより、いま夢を果たすことにしました。

もちろん遠くからのんびりと見るのもあり(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

もちろん遠くからのんびりと見るのもあり(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

さっそく行動開始! 仕事を調整し、チケットを取る

大好きでCDもほぼ持っているのにまだ観たことがない現役ロックミュージシャンは、ブルース・スプリングスティーン、ヴァン・モリソン、トム・ペティ、フリートウッド・マックの4組です(フリートウッド・マックのみバンド)。そのうち日本に一度も来たことがないのは、アイルランドの孤高のシンガー、ヴァン・モリソンです。2月に入りこのモリソンが、4月にニューオーリンズで行われるフェスに出演することを知りました。そこで仕事を調整し、急いでチケットやホテルなどの予約を始めました。

3月になると今度は、ブルース・スプリングスティーンが欧州ツアーを行うことも知りました。スケジュールを見ると5月の連休明けに、スペインのバルセロナで公演があります。バルセロナには家に何度か泊めてもらった友人がいるので、ダメ元で友人に「スプリングスティーンのチケット取れる?」とメールを送りました。公演はサッカーのFCバルセロナの本拠地のカンプノウスタジアムで行われるのですが、ラッキーなことに友人はFCバルセロナの会員で、「会員枠でチケットが取れそう」と返事が来ました。これは利用しないわけにはいきません。

3月末、友人からチケットが取れたという知らせを受け、一番安い航空券の手配をします。一ヶ月ほどの間に、ニューオーリンズとバルセロナ両方に行くので、その前後の仕事が地獄のようでしたが目標があればなんとかなるものです(笑)。まずはGWにニューオーリンズへ旅立ちました。

フードスタンドで地元のファストフードを買って食べるのも、いい思い出(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

フードスタンドで地元のファストフードを買って食べるのも、いい思い出(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

ニューオーリンズ、そしてバルセロナに行った2016年

ニューオーリンズは早朝に着き、ホテルチェックイン後、そのままフェス会場に向かいました。1945年生まれのヴァン・モリソンは、その時70歳。1964年にバンド、ゼムのリードシンガーとしてデビューし、1966年以降はソロアーティストとして活躍しています。日本ではあまり知られていませんが、欧米ではトップミュージシャンです。この時は代表曲も取り混ぜる、ほぼ曲間なしの怒涛のメドレーで70分19曲を聴かせてくれ、私は夢が叶い大満足でした。ライブが始まる前には、軽飛行機がその2週間前に亡くなったPRINCEの文字を青い空に描いていました。人はいつ死ぬかわからないもの。私は思い切って行動し、ここまで来られた幸せをつくづく感じました。

ヴァン・モリソンのライブ前に上空に描かれたのは、その2週間前に亡くなったPRINCEの文字(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

ヴァン・モリソンのライブ前に上空に描かれたのは、その2週間前に亡くなったPRINCEの文字(ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェス)

3週間後、今度は私はバルセロナのカンプノウスタジアムにいました。9万人以上を収容できるスタジアムは、グランドまで超満員。隣はアメリカから来たファンで、世界中からこのコンサートを見に来ているのでしょう。ブルース・スプリングスティーンは、1997年以降には来日していません。海外の人気と日本での人気の落差を考えれば、今後も来日は望み薄です。なのでまさか本物を目の前で見られるとは夢にも思っていませんでした。

スプリングスティーンのコンサートが行われたバルセロナのカンプノウスタジアム(バルセロナ)

スプリングスティーンのコンサートが行われたバルセロナのカンプノウスタジアム(バルセロナ)

開演は土曜とはいえ21時。70歳近いのに最初の一時間はほぼ曲間やMCなしで押し切り、そのパワーに驚きました。そしてライブがなかなか終わらない(笑)。3時間を超えると、もうこのライブは永久に終わらないのではないかと思いましたよ。2回のアンコールを含む4時間全36曲のステージに圧倒され、結局、ライブが終わったのは深夜1時でした。生涯に観たベストライブのうちのひとつです。

コンサートグッズ売り場も日本に比べると空いている(バルセロナ)

コンサートグッズ売り場も日本に比べると空いている(バルセロナ)

死の半年前に観たトム・ペティの2017年ライブ

翌年2017年は、結成40周年記念ツアーの一環でトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが出演したニューオーリンズのフェスに行きました。1950年生まれのペティとそのバンドは、アメリカではスーパーボウルのハーフタイムショーで演奏するほどの国民的バンドです。しかし日本ではなぜか人気がなく、バンドの単独日本ツアーは1980年の1回だけで、全盛期を日本で見たことがある人はほぼいません。

当日は朝から暴風で、フェス中止一歩手前になりましたが、奇跡的に天候が回復しライブを見ることができました。フェスにもかかわらず、内容は通常のコンサートと同じ2時間にわたる充実したものでした。この時は代表曲を中心に演奏。年齢層は平均50歳ぐらいと高かったですが、会場は大合唱でした。トム・ペティの訃報を聞いたのは、そのライブの半年後の2017年10月でした。ツアーを終えた1週間後に鎮痛剤を過剰服用し亡くなったのです。

 

現在も時おり、海外に観に行きたいライブがあります。もちろんすべてが行けるわけではありません。しかし何度か行った経験があると、行けるか行けないかのハードルは自分の心の中にあると考えるようになりました。“いつか”は受け身では実現できません。自分で積極的に行動し遠くまで観に行ったコンサートやライブは、自分にとっては“一生モノ”の旅になるのです。

前原 利行

日々、自分の興味があるものを追いかけています。音楽、映画、アート、歴史、そしてまだ見ぬ世界の風景や文化…。心に刻まれた一生モノの経験が、自分の最大の財産でしょうか。これからも、まだ知らない出会いを探していきたいと思っています。

前原 利行
この記事を書いた人

この記事を書いた人前原 利行

201810/30

アメリカ音楽の豊かさを体験できるビッグイベント!ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル [海外旅行 アメリカ]

いちばん大きなAqura Stageにはフェスのヘッドライナーが出る

いちばん大きなAqura Stageにはフェスのヘッドライナーが出る

ヒットチャートからだけではわからないアメリカ音楽の奥深さ。それが体験できるのが、アメリカ南部のルイジアナ州で毎年開かれるニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバルです。演奏されるのはジャズに限らず、アメリカ音楽全般で、日本ではなかなか目にすることのできないアーティストのライブ演奏も見ることができます。今回はポピュラー音楽好きなら一生に一回は見て、聴いて、体験して欲しいこのフェスを紹介します。

ニューオーリンズは、ミシシッピ川の河口付近に開けた都市

ニューオーリンズは、ミシシッピ川の河口付近に開けた都市

アメリカ南部の代表都市・ニューオーリンズ

大河ミシシッピの河口に位置するニューオーリンズ。ここは19世紀初頭にアメリカに売却されるまで、フランスやスペイン領でした。そのため、ここはアメリカの中でもフランス文化やクレオール(フランス人やスペイン人と他の人種の混血)文化の影響が残り、食文化なども独自に発達してきました。「マルティグラ」と呼ばれるカーニバルは有名ですね。また、19世紀には綿花の集積地となったことから黒人人口も多く、それが20世紀に入り豊かな大衆音楽を生み出していきました。ジャズの発祥の地も、このニューオーリンズです。また、R&B、ファンク、ブルース、セカンドラインといった黒人系の音楽以外にも、フランス系移民によるケイジャンや、クレオール系黒人によるザディコといった音楽も盛んになりました。

客層の年齢層は意外に高く、のんびりと音楽を楽しんでいる

客層の年齢層は意外に高く、のんびりと音楽を楽しんでいる

日本のGW期間中に開催される音楽フェス

このニューオーリンズで開催される全米最大級の音楽フェスが、ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバルです(以下単に「ジャズフェス」)。町の北3kmにあるフェアグラウンズ競馬場が会場となり10を超えるステージで、さまざまなジャンルの音楽の演奏が行われます。また会場ではニューオーリンズを始めとする南部料理の出店や、アートショップ、実演コーナーも設けられ、会場内をニューオーリンズスタイルのブラスバンドがパレードするなど楽しい空間になっています。

ジャズフェスに出店しているアメリカ南部料理の屋台も楽しみ

ジャズフェスに出店しているアメリカ南部料理の屋台も楽しみ

ジャズフェスの開催期間は、4月の最終金〜日曜と、5月の最初の木〜日曜の合計7日間。ちょうど日本のGW期間にあたるので、休みを利用して遊びに行く日本人も少なくありません。開催時間は昼の11時から夕方19時というデイフェスで、治安の心配も不要。客層もファミリーから年配客までと幅広く、むしろ他よりも若者の比率が少ないフェスかもしれません。

「ジャズ」と名前が付いていますが、その年のヘッドライナーとなる出演者は、ロック・ポップス系のビッグネームが多いですね。たとえば、2015年はエルトン・ジョン、エド・シーラン、ザ・フー、トニー・ベネット&レディー・ガガ、2016年はレット・ホット・チリ・ペッパーズ、ニール・ヤング、べック、パール・ジャム、2017年はスティービー・ワンダー、トム・ペティ&ハートブレイカーズ、マルーン5、2018年はエアロスミス、ロッド・スチュワート、スティングなどが出演しました。

 

いま、行かないと見れなくなるという想い

私がこのジャズフェスに初めて行ったのは2016年のこと。それよりずっと前から行きたいと思っていたのですが、なかなか休みを取る決意がつかないでいたのです。しかし、2016年の1月に私の好きなアーティストのデヴィッド・ボウイ、モーリス・ホワイト(EW&F)、グレン・フライ(イーグルス)らが次々と亡くなったことがきっかけになりました。好きなアーティストは見れる時に見ておかないと、一生その機会を失ってしまうかもしれないと。

2月に出演者のラインナップが発表され、その中に未だ来日したことがないアイルランドの孤高のシンガー、ヴァン・モリスンの名前を見つけたときに。私はフェス行きを決めました。モリスンはそのとき70歳。彼はもちろん私にとって、一生に一度は見ておきたいアーティストだったのです。

ジャズフェスは競馬場の広い敷地で行われる

ジャズフェスは競馬場の広い敷地で行われる

いざ、ニューオーリンズへ

この旅につきあってくれる友人を見つけ、3月に入り飛行機やホテルの手配が始まりました。フェスのチケットはネットで購入。日本のGWとちょうど重なるため、航空運賃も高めでしたが仕方ありません。また、ニューオーリンズのホテル代も期間中は値上がるため、少し離れたモーテルも利用するなど、節約の工夫もしました。

会場となる競馬場は、ニューオーリンズ名物のトラム(路面電車)の終点から徒歩約10分。会場にはざっくりとジャンル分けされた10ほどのステージがあります。一番大きなAcura Stageには夕方からはメインアクトが登場します。次に大きなGentilly Stageは会場の反対側にあり、こちらはメインに準じるアーティストが出演します。3番目に大きなCongo Stageはブラックミュージックが中心でファンク、ヒップホップ、R&B系のアーティストが出演。あとはジャズ、ブルース、ゴスペルなどジャンル分けされたテントのほか、ケイジャンやザディコ、ニューオーリンズ・ジャズ、ニューオーリンズ・ブラスバンドなどの小さなステージがあります。音に誘われるままに、日本ではあまり聴くチャンスのないタイプの音楽を聞いて回るのはとても楽しいものです。ゴスペル音楽ばかりのステージがあるというのも、ニューオーリンズらしいですよね。

さまざまなタイプの音楽が聴けるのもこのフェスの魅力だ

さまざまなタイプの音楽が聴けるのもこのフェスの魅力だ

目的は達成、そして翌年もニューオーリンズへ

2016年、私のお目当であるヴァン・モリスンは、2番目に大きなGentilly Stageでの出演でした(同じ時間のメインステージはパール・ジャム)。MCはほとんどなく、19曲立て続けの70、80分ほどの怒涛のパフォーマンスに圧倒されました。演奏中、上空を飛ぶ軽飛行機がその2週間ほど前に亡くなったプリンスの文字を描いていたのも印象的でした。

ジャズフェス上空に軽飛行機で描かれた「PRINCE」の文字。この日の10日ほど前に、プリンスは亡くなった

ジャズフェス上空に軽飛行機で描かれた「PRINCE」の文字。この日の10日ほど前に、プリンスは亡くなった

2017年のジャズフェスは、結成40周年記念ツアー中のベテランロックバンド、トム・ベティ&ハートブレイカーズをどうしても見たく、なんとか時間をやりくりして行きました。ペティが亡くなったのはその半年後。なので、思い切って行って本当に良かったと思います。生でライブを見る機会を、永久に失わずにすんだのですから。

名物の殻付きオイスターは一皿12個だが、ペロリと食べてしまうおいしさ。これを食べに行くだけでも価値アリ!

名物の殻付きオイスターは一皿12個だが、ペロリと食べてしまうおいしさ。これを食べに行くだけでも価値アリ!

ライブ以外にも楽しみがある

このフェスの楽しみのひとつにフード屋台があります。スパイシーなアメリカ南部料理は日本人の口にもよく合いますが、ニューオーリンズはその中心地のひとつ。会場では、ご飯料理のジャンバラヤ、オクラを使ったミックススープのガンボ、バゲットサンドのポーボーイ(ナマズのフライを挟むのがニューオーリンズ風)、そして名物の生ガキのプレートまで食べられ、私は、翌年はそれも楽しみで行ったほどでした。

旧市街のフレンチクオーターの散策も楽しい

旧市街のフレンチクオーターの散策も楽しい

ライブが終わっても、ニューオーリンズの夜はまだまだ続きます。期間中は、市内のホールやライブハウスでも多くのライブが行われています。また、旧市街にあたるフレンチクオーターで、名物の南部料理を食べるのも楽しみです。食は旅には欠かせない楽しみですよね。ライブバーがずらりと並ぶ歓楽街のバーボンストリートも外せません。24時ぐらいまでなら人も多く、警官も巡回しているので治安も問題ありません。私も毎晩繰り出し、大いに楽しみました。

 

アメリカのポピュラーミュージック好きにはたまらないこのジャズフェス。私にとっては、まさに一生モノの音楽体験でした。全体の雰囲気も良く、本当に行って良かったと思えるフェスです。海外なので少しハードルは高いかもしれませんが、みなさんもぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

 

[ DATA ]

ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテージ・フェスティバル
[公式ページ] http://www.nojazzfest.com

※2019年の開催予定は4月26日〜5月5日。ラインナップは2月中旬に発表。タイムテーブルは3月中旬に発表される予定。

前原 利行

日々、自分の興味があるものを追いかけています。音楽、映画、アート、歴史、そしてまだ見ぬ世界の風景や文化…。心に刻まれた一生モノの経験が、自分の最大の財産でしょうか。これからも、まだ知らない出会いを探していきたいと思っています。

前原 利行
この記事を書いた人

この記事を書いた人前原 利行

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